東農大・前田和摩が約1年ぶりにレース復帰、「今季は箱根駅伝までチームのレースに集中したい」

 全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会で約1年ぶりにレース復帰した前田和摩(東農大3)。古豪・東農大が誇る〝50年に一人〟の逸材はどこに向かっていくのか──。
酒井政人 2025.06.05
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 5月24日に行われた全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会で前田和摩(東農大3)が約1年ぶりの〝レース復帰〟を果たした。

 最終4組に出場した前田は2年前と異なり、留学生にはついていかない。大集団を引っ張るようなかたちでレースを進めて、5000mを14分25秒ほどで通過した。終盤はペースが上がったなかで前田は28分30秒25の12着でフィニッシュ。東農大の最終成績は13位だった。

 チームは伊勢路の出場を逃したが、前田はスッキリとした表情で取材に応じた。

「去年の1年間はなかなかうまくいきませんでした。報道では『気胸で』という感じだったと思うんですけど、実際は気胸から回復した後も、ジョグを再開して、体調を崩して、ジョグを再開してケガをして、また体調を崩してというような状況だったんです。最近はしばらく良い状態で練習ができていて、このレースにもまた出ることができました。チームの一員として、走りでチームの力になれたことが凄くうれしく思いますし、またこの舞台に戻ってこられてうれしいです」

 前田は報徳学園高3年時にインターハイ5000mで日本人トップを奪った選手。そして第2回大会から箱根駅伝に出場している古豪・東農大に入学した。同校にとってインターハイ5000mの優勝者(&日本人トップ)は服部誠以来。東農大にとっては〝50年に一人〟の逸材だ。

 前田は2年前の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会で初めて10000mに挑戦。U20日本歴代2位(当時)となる28分03秒51をマークして、日本人トップに輝いた。スーパールーキーの活躍で東農大は14年ぶりとなる伊勢路を決めている。

 4カ月後の箱根駅伝予選会でも日本人トップの快走を披露。ハーフマラソンを1時間01分42秒(当時・U20日本歴代2位)で駆け抜けて、チームを10年ぶり70回目の箱根駅伝に導いた。

 前田の〝ポテンシャル〟について、小指徹監督は「中山竹通さんクラスですよ。狙って10000mに出場すれば、27分30~40秒で走るんじゃないですか」と話していたが、昨年5月の日本選手権10000mで小指監督の〝言葉〟を上回る快走を見せる。U20日本記録&日本人学生最高となる27分21秒52(当時・日本歴代5位)で2位に食い込んだのだ。

 パリ五輪も狙える状況だったが、日本選手権後に気胸を発症する。そこから、復帰への道は険しいものになった。

 小指監督は夏合宿で「箱根予選会は前田なしで戦う」ことをチームに伝えた。絶対エース不在の東農大は下馬評を覆して、大健闘する。順大に1秒届かなかったが、出場ラインに肉薄したのだ。

 そしてチームの惜敗が前田の心を揺さぶった。

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